乳幼児の疾患

医療では「子供は小さな大人ではない」という言葉があります。お子様の皮膚は大人に比べて非常にデリケートなため、特に注意が必要です。お子様だけにしか見られない皮膚病もありますので、専門医にしっかりと診察してもらって下さい。

 

乳児湿疹

赤ちゃんの顔や体に出来る、最も一般的な湿疹です。頬や口まわり、さらにおでこや頭の方まで、赤いポツポツやカサカサ、黄色っぽいフケやカサブタのようなものまで、いろいろな症状になります。お母さんの中には「アレルギー体質なのでは?」とすごく心配される方がいらっしゃいますが、実際には多くの赤ちゃんが経験する一般的な病気です。かなりひどい症状だったとしても、1-2歳までの間にどんどん治っていくことがほとんどです。

生まれたばかりの頃は、お母さんのホルモンの影響で湿疹を生じやすく、その後も食べこぼしやティッシュで拭いたりする刺激により悪化するケースが良くあります。治療の基本は、擦りすぎや洗いすぎなどの刺激をなるべく避けて、しっかりと保湿を行うことです。当院では、ケアのポイントをしっかりとお伝えしています。

アトピー性皮膚炎

お子様が湿疹を繰り返しているときに、お母さんが最も心配されるのがアトピーです。アトピーのお子様の半数以上が、食物アレルギーの検査に陽性を示すことが多いのですが、最も栄養が必要な時期に、食べ物をあれこれ制限してしまうのは逆に成長にとってマイナスであると言われています。

このような食物アレルギー(特に多いのが卵・小麦・牛乳)は3歳ごろまでに少しずつ慣れて耐性ができ、小学校に入学する頃には食べられるようになることが殆どです。症状をよく観察し、実際に食べてみて悪化するのが明らかな場合だけ、食物制限するのが良いでしょう。

また、最近では乾燥や掻きこわしなど皮膚が荒れたままで放置しているとアレルギー体質がドンドン悪化していく事が分かってきており、上手なケアが欠かせません。

ステロイドの塗り薬に抵抗感をお持ちのお母さんもおられますが、症状に応じて必要な量を必要な期間だけ上手に使い、適切に調節すれば心配はいりません。そのあたりの詳しい方法も、当院ではしっかりお伝えするようにしています。

とびひ

子供の頃は、あせもや虫刺され・乾燥などでかゆくなると、我慢できずにボリボリと「掻いてしまいがち」です。その結果、皮膚にできた小さな傷から、バイ菌が入り込んでしまいます。そして皮膚のすぐ下で大量に繁殖し始めます。これが「とびひ」と呼ばれる状態です。

とびひには水ぶくれができるもの(水疱性膿痂疹)とかさぶたができるもの(痂皮性膿痂疹)の2種類があり、それぞれの菌の種類が異なります。 最近では、薬の効きにくい耐性菌がいることもありますので、当院ではしっかりと細菌検査まで行っております

とくにアトピー性皮膚炎の患者さんは皮膚のバリア機能(肌を外敵から守るバリア)が低下しており、とびひにかかりやすいので注意が必要です。

水イボ

5~6歳児ぐらいに最も多くみられる、子供特有のウイルス性のうつる病気です。1-2mm程度の肌色~やや赤みを帯びたポツポツした光沢のある発疹が体の至るところに出てきます。プールや保育園で次々と広まってしまう事が多いです。

放置しても、いずれウイルスに対する免疫力ができて、自然治癒することが知られています。ただし、自然治癒までの期間が1-2年と非常に長いため、増えすぎるのを防ぎ、早めに治すために摘除(専用のピンセットでつまんで取る)を行います。麻酔のテープを上手に使用するとほとんど痛みもなく除去できます

それでもどうしても痛がったり、怖がったりしてしまって摘除が出来ない場合や、そもそも数が多すぎる場合、当院では硝酸銀という塗り薬を併用して治療する痛みの少ない方法もご用意しております。ご相談下さい。

手足のイボ

「急にウオノメが子供の手足に出てきた」と言って受診されるお母さんが多いです。しかし小児期にはウオノメが出来ることは少ないため、こういったケースでは水イボとはまた違った「パピローマ」というウイルスが皮膚に潜り込んでしまってイボを作っていることが多いです。

皮膚科での手足のイボの治療は、液体窒素による凍結療法が基本です。週に1回程度の通院治療を何度か行う必要があります。ただし痛みがどうしても我慢できないお子様には薬剤塗布による治療(治癒までに時間がかかる場合や、一部自費診療になる場合があります)も行っておりますので、詳しくはご相談下さい。

カンジダ性皮膚炎

「かぶれ」や「湿疹」と診断されて、病院でもらった薬を塗っていても全然良くならない場合、カンジダという菌が悪さをしていることがあります。例えば「おむつかぶれ」だと思っていたら、便の中にいるカンジダ菌が赤ちゃんのお尻について炎症を起こし、股に赤いブツブツができたり、皮膚が剥けてただれてしまったりする事もあります。

カンジダ性皮膚炎の治療は、患部の皮膚を顕微鏡で調べて菌がいるかどうかを確認した上で、カンジダに効果のある塗り薬を塗る必要があります。皮膚科の専門クリニックでないとなかなか判明しづらい病気です。心配な時はご相談ください。

かぶれ(接触皮膚炎)

幼少期は皮膚自体が弱いため、いろいろな炎症を起こします。

おむつかぶれは尿や便に皮膚が刺激され、おむつの当たるところに赤いブツブツやただれができます。
よだれかぶれは、よだれ自体や食べ物による刺激、よだれを拭き取る際の摩擦、拭き取り後の乾燥などで、頬や口の周りに炎症を生じます。
砂かぶれでは手足の皮がむけたり、赤くなったり、ブツブツができたりします。砂遊びの後に生じるものが典型的ですが、手足に接触したいろいろな物が原因となります。
ズック皮膚炎では足の指が少し赤くなり、乾燥してカサカサとなり、やがて亀裂ができます。ゴム靴や靴に入った砂などの刺激が原因と考えられます。

いずれの場合も、原因となるものとの接触を上手に減らすことが不可欠です。繰り返すときは是非ご相談ください。

麻疹・風疹

幼少期にかかりやすい、発疹を伴うウイルス性の病気です。どちらも初期には鼻水や、発熱など風邪に似た症状があらわれます。

麻疹では目の充血をともなうこともあり、次いで口の中の頬の粘膜に、斑点が出ます。その後いったん熱が下がりますが、約半日後に再び熱発し、同時にやや盛り上がった赤い発疹が体中にあらわれます。
症状は2週間程度持続し、ごくまれに肺炎や中耳炎などを合併することがあります。また、大人になってからかかると重症化しやすいといわれていますので、注意が必要です。

一方風疹の症状は、まずあごや首などのリンパ節が腫れることが多く、その後、麻疹よりも淡いピンク色をした発疹が顔や耳の後ろにあらわれ、軽い痒みをともなうこともあります。この発疹は1~2日で全身に広がり、3日程度で自然に消えていきます(そのため俗に3日麻疹と呼ばれます)。

また、妊婦が感染すると、胎児に重大な影響が出ることがありますので、どちらも子どものうちにワクチンを接種することが非常に重要となります。

水ぼうそう(水痘)

水ぼうそうは、正式な病名を「水痘」といいます。麻疹に次ぐ感染力の強いウイルスで、空気感染するため、90%以上の人が9歳頃までに発症します

症状はウイルスに感染してから2週間ぐらいたってから、軽い発熱と共に体中に水疱を伴った赤いポツポツが出現します。発疹は頭の中にまで出現しますが、手のひらや足のうらにはほとんど出来ることがありません。また発疹は少しずつ枯れていき、通常5~7日でカサブタ化します。学校はすべての発疹が完全にカサブタ化するまで、出席停止となります

また、子供の場合は一般に軽症であることが多いようですが、大人では時に重症になることもありますので注意が必要です。平成26年10月からワクチンの定期接種が開始されたため、今後は発症する人は大幅に減少すると考えられます。

手足口病

口の中、手のひら、足の裏などに小さな水疱性の発疹が出る、ウイルスの感染によって起こる風邪のような病気です。子どもを中心に、主に夏に流行します。感染するほとんどが、5歳以下の乳幼児です。

ウイルスは便の中に排泄され、それが他の人の口に入って感染することが多いようです(糞口感染)。特に、この病気にかかりやすい乳幼児が集団生活をしている保育施設や幼稚園などで良く集団発生します。

感染すると数日で、口の中、手のひら、足の裏などに1~3mmの水疱や赤いポツポツが出ます。発熱も高熱ではありませんが、3人に1人程度の確率でみられます。

手足口病は、治った後も比較的長い期間便の中にウイルスが排泄されますので、日頃からのしっかりとした手洗いが大切です。

手足口病に特別な治療方法はありません。また、基本的には軽い症状の病気ですから、経過観察を含め、症状に応じた治療となります。しかし、まれに髄膜炎や脳炎など中枢神経系の合併症などが起こる場合があります。注意が必要です。

リンゴ病(伝染性紅斑)

左右の頬に「平手打ち」を食らったような赤みが出て、リンゴのようにも見えるため、俗にリンゴ病と言われます。正式には伝染性紅斑といいます。赤みは腕や脚や体にも出ることもあります。カゼのように人から人へと移るウイルス性疾患であり、鼻水や咳からの飛沫感染が多いと言われています。

潜伏期は約1週間で、その後軽い風邪症状が起こります。実は顔に赤いリンゴのような発疹が出るのは、この軽い風邪症状の数日後であり、この時期すでにウイルスは人に移ってしまっており、感染力はありません。ですので学校を休む必要なども基本的にありません。

治療はこれといって必要ではなく、経過観察で構いません。ただし、妊婦さんに移った場合には、かなりの効率で胎児に悪影響が出ますので、むしろ母親の方が注意が必要となりますので、その点は十分に気を付けましょう。

ヘルペス感染症

乳幼児・小児のヘルペスの90%は症状がないまま感染します。ときに初感染の症状の一つとして口内炎があります。高熱とともに口の中、舌、唇などにブツブツや白いものが多発して、リンパ節が腫れ、食事や飲水が困難となります。またときには指先に感染し水疱を形成します

乳幼児では指しゃぶりで口から感染したり、逆に指から移って口内炎を生じることもあります。痛みが激しく、ワキのリンパ節が腫れ、発熱することもまれではありません。 ヘルペスウイルス感染症の治療は、「抗ウイルス薬」の内服が非常に効果があり、初感染では特に高い有効性が認められます。ただしこのように良い薬があっとしても、ヘルペスの初感染は、慣れていないと診断が難しいものです。もしや?と思った場合には迷わず受診してください。

頭じらみ

保育園などで子供たちの間で集団発生するのが、この頭じらみです。頭髪に寄生し、頭皮から吸血してかゆみや湿疹などを起こします。そして毛髪に点々と卵を産み付けます。

非常に強い「激しいかゆみ」がある日、急に始まるのが特徴です。不潔だから湧いたりするわけではなく、体や髪が触れ合ったりすることで、偶然の接触により感染が起こります。

頭じらみを発見した場合は家族にも感染している可能性が高いので、みんな同時に駆除する必要があります。スミスリンという専用のシャンプー剤を使用して治療を行う必要があります。

あざ・ほくろなど

生まれつきや、乳児期に出現してくる、「黒あざ」や「赤あざ」はご家族が非常に心配される疾患です。

これらは例えば、ほくろがやや大きいだけの場合もあれば、扁平母斑・表皮母斑・脂腺母斑などと専門的には分類される特殊なほくろの様な場合もあります。さらに赤いあざでは、血管腫とよばれる血管の異常なできものであったりします。血管腫も単純性血管腫やいちご状血管腫など様々な種類があり、自然に消える場合や消えない場合もあります。

このように種類が多数あることから、まずしっかりとした診断が必要になります。治療についても早期に行う方が良いケース・逆に行わない方がよいケースもありますので、まずはご相談ください。当院で加療できない場合は、大学病院などの専門施設を紹介することが可能です。


 

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